暴行罪

暴行罪(ぼうこうざい)の概要

暴行罪は、日本の刑法第208条に規定された犯罪で、人に暴行を加えたものの、傷害に至らなかった場合に成立します。本罪の保護法益は「身体の安全」であり、傷害の結果が生じた場合には傷害罪(刑法第204条)が適用されます。

判例では、暴行の範囲が広く解釈されており、毛髪を根元から切る行為や着衣を引っ張る行為、食塩をふりかける行為、さらにはブラスバンド用の太鼓の音で被害者を朦朧とさせた事例(最判昭和29年8月20日)でも暴行が認められています。また、身体に接触しない場合でも、人を狙って石を投げたが当たらなかったケースや、脅す目的で日本刀を振り回したケース(最決昭和39年1月28日)も暴行罪の既遂とされています。

法定刑は2年以下の拘禁刑、30万円以下の罰金、拘留または科料ですが、暴力行為等処罰法による集団的暴行罪や常習的暴行罪など、特別法による加重類型も存在します。

興味深い点として、暴行の故意がありながら意図せず傷害結果が生じた場合、条文上は暴行罪に該当しないものの、判例・通説は傷害罪の適用を認めています(最判昭和25年11月9日)。これは、傷害が発生した場合の方が暴行のみの場合より法定刑が軽くなるという不均衡を是正するためです。

なお、マスメディアでは「暴行」という語が強姦の婉曲表現として用いられることもありますが、法律上の暴行罪とは異なる概念です。