武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新

歴史学者・磯田道史が2003年に上梓した『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』は、加賀藩の下級武士で会計担当「御算用者」を務めた猪山家に残された約37年分の「入払帳」を分析したノンフィクションです。著者が2001年(平成13年)に神田神保町の古書店で偶然入手したこれらの文書から、1842年(天保13年)に始まる借金整理の過程や武士身分特有の「身分費用」(祝儀交際費など)が克明に記録され、江戸時代末期の藩政システムや武士の日常生活が実証的に描かれています。物語は、家禄を100石から180石に増やした猪山直之と、その息子で明治維新後に大村益次郎に見出され海軍主計官として活躍した成之の親子二代の足跡を中心に展開し、時代の転換期を生き抜いた武士の実像を浮き彫りにします。この革新的な歴史書は幅広い読者に支持されてベストセラーとなり、2010年時点で20万部を突破しました。同年には森田芳光監督、堺雅人主演による同名の時代劇映画『武士の家計簿』が公開され、興行収入15億円の大ヒットを記録するなど、江戸から明治への移行期を家計という新たな視点から解き明かした話題作となっています。