密教

密教(みっきょう)は、大乗仏教の中でも秘密の教えを指す「金剛乗」とも呼ばれる一派で、日本では真言宗(東密)や天台宗(台密)を指しますが、インドやチベットの同種の仏教思想も含む総称です。その特徴は、曼荼羅や灌頂(かんじょう)などの儀式を重視し、視覚的な瞑想(阿字観)や師から弟子への秘密の口伝によって、この身このままで仏になる「即身成仏」を目指す点にあります。空海(弘法大師)は『弁顕密二教論』で密教の三原則(法身説法、果分可説、即身成仏)を説きましたが、実は「即身成仏」という言葉自体は密教経典には一度も登場せず、空海の著作だけが論拠となっています。歴史的には、初期の呪術的な陀羅尼から、『大日経』や『金剛頂経』による中期密教、そしてヒンドゥー教のタントリズムの影響を受けた後期密教へと発展し、後期には性的実践や憤怒尊が登場しました。最後の密教経典『時輪タントラ』では、イスラム勢力の侵攻によるインド仏教の崩壊と、理想郷シャンバラの王による最終戦争での勝利、そして未来の仏教復興が予言されています。インドではイスラム勢力の侵攻で仏教が途絶えましたが、密教の体系はチベットに継承され、現在のチベット仏教(かつてのラマ教)の基盤となっています。